菅江道澄の道
男鹿の秋風
昔、この寒風山の名を妻恋山・また羽吹風山ともいったということでもある。ようやく、よじ登って見ると、八尺あまりの九層の石塔がある。どのくらい年数をえたものであるか、そこに苔など生えひろがっている。この塔のそばに倒れている近世の石碑に、梵字がかすかに見えた。右手の谷に岩山があり、そのあたりの落窪になっているところを旧珠の池といい、大蛇が通ったという大岩がある。この寒風山の麓は、湖と海にとりまかれていて、丁度近江国の伊吹山に登り、左方に毛無山、右方に貝津、山本山など見渡したようで、三千世界も一望のうちに尽きるかと思われ、素晴らしい眺望であった。